引っ越しに対応

自動車ビジネスに未来はあるか。
エコカーと新興国で勝ち残る企業の条件下川浩一宝島社新書はじめにあれほど栄華を誇り、先進国の経済の牽引役であった世界の自動車産業に、大きな危機と大転換が起こりつつある。
その引き金となったのが、昨年2008年9月のアメリカの大投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻いわゆるリーマン・ショックに始まる世界金融危機であることは誰の目にも明らかだ。
この世界金融危機は、しばしば1929年の大恐慌になぞらえられることが多い。
だが、29年の大恐慌は単なる株式恐慌だった。
世界的に株式相場がいっきょに下がり、その連鎖と金本位制が崩れ、各国が自国通貨の防衛のための切り下げと保護貿易に走った。
それにともなう経済混乱を制御する仕組みやシステムがなかったのに比べて、今回の世界金融危機は、まさにグローバルな金融危機として、世界を覆う信用経済の収縮とグローバルな信用リスクをヘッジする仕組みの崩壊となって現われた。
ベルリンの壁の崩壊と東西冷戦の終結以来20年にわたり、世界先進国が享受してきたグローバル信用経済の繁栄が続かなくなったという意味で、人類がこれまでに経験したことのない世界同時不況となって現われている。
この世界同時不況は、これまでのような地域や国が限定された不況でもなく、単まじめにJなる循環性の局地的不況でもないという点で異質のものといえる。
ジャーナリズムの表現を借りると、金融信用経済の全般的不況が実体経済に及んだという。
そして、その実体経済の代表格が自動車産業であり、そのために世界金融危機が自動車産業を直撃したともいう。
だが、自動車産業の今日までの繁栄を支えた大量生産・大量流通、そして大量販売と大量消費という加世紀型のパラダイムは、大量販売と大量消費を可能にした信用経済の膨張によって支えられてきたものだ。
その意味では、自動車産業それ自体がグローバル化した信用秩序そのものに組み込まれていたと見ることもできる。
つまり、今回の世界金融危機の引き金になったといわれるサブプライムローンと自動車ローンは同根なのであり、米国金融バブルの崩壊は、自動車ローンの世界をも直撃したと見ることができるのだ。
そこで本書では、まず米国金融バブル崩壊が自動車産業にどのような形で危機をもたらしたかを、ビッグスリー、そして日本自動車メーカー、さらに欧州自動車メーカーについて明らかにする。
そこではGMなど、ビッグスリーの経営危機がなぜあのように急激な形で顕在化したか、そしてビッグスリーの凋落を横目に、北米や欧州で市場シェアを拡大し、まさに連戦連勝の感すらあった日本の自動車産業が、昨年9月以降のリーマン・ショックを境にして、坂道を転がり落ちるように赤字に転落した背景についても明らかにする必要がある。
そして次に、ソ連崩壊後、中東欧への拡大や独特の車作りと技術開発でそれなりに健闘してきた欧州自動車産業(主に独・仏自動車メーカー)が、なぜ各国ごとの政府の財政支援と税制支援を受けねばならなかったかも明らかにしなければならない。
さらには、こうした自動車産業をめぐる世界的な危機の実体を踏まえて、転換期にある自動車工場で何が起ころうとしているのか、そして長い間フランチャイズ方式を固守してきた自動車販売の現場で、どのような変化が予想されるのかについても明らかにする必要がある。
加えて本書では、この未曽有の世界的金融危機から自動車産業がどう脱却するかについて考えてみたい。
そのためには、どのような条件と環境が作られていくべきかということと、もう一つには、そのような条件作りのために、自動車産業が主体的、戦略的に追求すべき方向性と課題を明らかにする必要がある。
前者はいうまでもなく、世界の自動車産業を混乱に陥れた世界の金融秩序と信用収縮の悪循環を断ち、新たな金融秩序と信用経済の再構築をはかることだ。
また後者に対する回答は、ただ単に20世紀型の大量生産、大量販売-大量消費の旧パラダイムへ回帰することではなく、クルマ社会の恩恵を受けていなかった途上国や新興国向けの戦略により重点を置き、先進国主体のビジネスモデルにとらわれない新しいビジネスモデルを追求し、こうした地域にも焦点を当てた環境技術と環境戦略を、全地球的に展開することである。
以上のように、今回の世界金融危機と自動車産業の関連を見ていくと、結局、ハードとしての自動車をすべての中心に置いた自動車社会や自動車文明のあり方からどう脱却するかが、問われることになるだろう。
今後自動車産業は、従来の自然征服型の産業から、資源・エネルギーの脱石化燃科の循環社会を目指す共生型社会実現の申し子として位置づけていく必要がある。
その意味では、新しい戦略目標と壮大な夢を追求することにならざるをえない。
今後、人類が切り拓いていくべき地球文明の行方に責任を持つ産業とするには何をすべきか。
そして、それが実現した時、自動車産業はどう変身しているのか。
今回の危機は、まさに自動車産業のアイデンティティーを再考し、今後のあり方を根底から問いかける大きなチャンスだといえよう。
本書ではその方向性を示してみたい。
米国金融バブルに踊った自動車産業
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